組織発生学分野

組織学は人体の器官を構築する組織、また、組織を構成する細胞の構造・配列・機能を解明する学問であり、顕微鏡などを用いて正常な組織・細胞の微細形態を明らかにしてゆきます。一方、発生学は個体ができる過程を学ぶ学問であり、受精卵から卵割した細胞が時間とともにどの部位に移動し、また、どのような組織構造を作り上げてゆくか明らかにしてゆきます。

組織学・発生学は、ともに、人体の構成単位である細胞の構造・機能を理解するところから始まります。また、それだけではなく細胞外マトリックスが細胞や組織に及ぼす作用、および、細胞間・組織間の相互作用についても明らかにしてゆきます。細胞が集まり組織へ、そして、組織から器官へと発達してゆきますが、その複雑な組織構造や機能、および、成り立ちを明らかにする点で、組織学・発生学は密接に関連する学問といえます。以上の点を踏まえて、歯科基礎医学会では、両者をまとめて組織発生学という1つの分野として扱うことと致しました。

口腔領域には、歯だけでなく、歯根膜・セメント質・歯肉・歯槽骨といった歯周組織や口腔粘膜、また、顎関節、唾液腺、舌など、他の領域にはない、多くの特徴的な組織があります。このことは口腔の形態学的・機能学的な複雑さ・巧妙さを反映していると考えられ、未だ解明されていない興味深いテーマも存在しています。組織発生学は、研究面において、遺伝子発現や遺伝子組み換え技術などの分子生物学的手法、培養技術や各種の顕微鏡などを用いて、口腔領域の生命科学や全身との関連性を解明してきました。教育面においては、肉眼解剖学や口腔病理学といった形態学的領域だけでなく、口腔生化学・生理学・薬理学などの生体機能を解明する領域とも深く関連しています。また、近年の細胞治療や生体材料の開発・発展とともに、再生医療・歯科再生医学の領域にも大きく寄与しており、今後の発展が期待されます。

組織発生学分野は、歯科基礎医学の1つの分野として、研究・教育面において他の分野とも連携しながら、これからの明るい未来を切り開くよう尽力して参ります。

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