薬理学分野

歯科医師は歯科臨床の場で多くの薬物を使用しますが、疾病の治療、予防、診断における合理的な薬物療法の基盤となる研究を行い、知識を提供するのが薬理学・歯科薬理学の役目です。薬理学は、薬物を生体に与えた場合に生体が現す反応を研究する科学です。歯科薬理学は薬理学の1分野ですが、歯内治療、歯周疾患、口腔粘膜疾患、唾液腺疾患に使用される薬剤など、医科では通常取り扱わない薬物も取り扱うという点で、一般の薬理学とは異なる面があります。また、薬理学の背景には解剖学、生理学、生化学、微生物学、病理学などがあり、薬理学はこれらの科目を包括した総合的な基礎学科目です。さらに、臨床に直結する知識を得るという観点から、歯科臨床科目とも密接な関連を有し基礎と臨床の接点とも言われます。

薬理学の教育目標は、基本的、代表的な薬物の薬理作用、作用機序、代謝、副作用、臨床応用などについて系統的な知識を修得させることにあります。歯やその歯周組織はもちろんのこと、口腔粘膜に用いる薬物など、口腔領域を通して生体に使用する薬物の作用を学びます。また、高齢者や歯科疾患以外の有病者が歯科を受診する機会が増えていますので、他科でもらった薬物の作用を理解し、歯科で使用する薬物との相互作用に配慮することも重要です。さらに、新しい薬物が次々と開発されていることから、最新の薬物の知識や治療法を学び、新たな薬物に遭遇しても知識を応用できるような薬理学的基盤を与えることも目的となります。このような点から、すべての歯科大学・歯学部において薬理学・歯科薬理学に関する講義と実習を行っています。また、臨床に直結した臨床薬理学の講義や実習、他学部の学生も対象とした一般教育としての薬理学に関する講義も担当しています。

大学院教育においては、一般に研究が主体となりますが、個人の進路や特性に応じたより発展した薬理学とその応用を学びます。将来独立して歯科領域に貢献できる教育者・研究者の養成も目的の一つであり、積極的に研究をおし進め、グローバルに活躍できる創造性豊かな教育者・研究者の育成を目指しています。

薬理学は総合的な分野であることから、各大学で行われている研究領域も多岐にわたります。ここで詳しく紹介することは困難ですので、各大学のホームページなどを参照して下さい。全体的には、1)硬組織の代謝、発生、再生などのメカニズムと影響を与える薬物・ホルモンに関する研究、2)骨粗鬆症などの硬組織疾患やう蝕と治療薬、3)歯周病の病因・病態と全身疾患の関連、4)唾液腺の機能・形成と口腔乾燥症及び関連薬の研究、5)歯科臨床に直結した薬物に関する研究・創薬・安全性の評価、6)歯髄・歯根膜などの細胞生物学と薬物、7)口腔疾患の遺伝子治療、口腔内科学的治療の研究、8)歯肉増殖など、薬物の口腔内有害作用と薬物動態、9)発がんのメカニズムと抗がん剤、10)イオンチャネル、薬物受容体などの研究、11)生体防御、歯周病などに関連するプロテアーゼなどの酵素に関する研究、12)炎症、免疫系のシグナル伝達と薬物、13)味覚・痛覚などの感覚、神経伝達、内分泌や老化などに関する細胞生物学、14)重金属の薬理作用・中毒 、15)オーラルジスキネジアや高次脳における口腔感覚情報の処理メカニズム、16)電子スピン共鳴法による抗酸化薬剤・食品及び診断・画像システムの開発と麻酔作用、などに関する研究が、薬理学的手法だけでなく、生化学、生理学、解剖学、分子生物学的手法を駆使して行われています。

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